【おすゝ名画】殺人狂時代
「殺人狂時代」1967年 99分 モノクロ 監督:岡本喜八
作品について
好きな映画監督を聞かれたら、なんと答えますか?
私は迷わず「岡本喜八!」と答えます。
そう、この作品の監督ですね。
そしてこの監督を好きになるきっかけとなったのがこの作品でした!
個人的にかなり思い入れのある作品ですので、いつもにも増して
長ーい記事になるかもしれないし、案外書くことないかもしれません(笑)
この作品はエンタメ色が強いですが、テーマは分かりやすいです。
ずばり……
「反戦」ダダーン!
反戦をテーマにしてはいますが、戦争のシーンは出てきませんし、
重い印象もありません。これについてはこの記事のここがおすゝめの中のトピックで
詳しく触れます!
登場人物
主人公:桔梗信治(仲代達矢)
大学で「犯罪心理学」を教えている。
度のきっつい丸メガネをかけ、治らない水虫に悩まされている冴えない中年男。
マドンナ:鶴巻啓子(団令子)
雑誌の記者。
桔梗にお色気攻撃を仕掛けちゃったりする系女子。
でもって桔梗のこと好きになっちゃう系女子。
相棒:大友ビル(砂塚秀夫)
町のチンピラ。車の運転が得意。
桔梗の車を盗もうとしたところ20キロしか出ず見事に失敗し、逆ギレする。
でも普通にいい奴。
悪役:溝呂木省吾(天本英世)
精神病院を経営すると同時に「人口調節審議会」なる殺人組織も運営している。
サイコ野郎。この天本さんの怪演は本当に光ってます✨
ここがおすゝめ
おすゝめ No.01
007・必殺仕事人ファン必見!武器のオリジナル感!
アクション映画の武器といって、思い浮かべるのはガン系、ナイフ・刀系、
車など乗り物メカ系。普通はこのへんかなと思ってます。
あとはチェーンソーとかとんでもないのが出てくることもあるようですが、
そうなってくるとグロメインだったりホラーテイストだったり。
純粋なアクションとは違うものになってきますよね。
ところが!この作品はアクションでありながら、武器が普通のガンや
ナイフだけじゃないんです!!
敵も味方も一見無害そうなフォルムのものを使って攻撃します!
ここら辺がちょうど007や必殺仕事人の武器のワクワク感と似てます。
どうやるんだろ…うわっ!!何これ!こう使うんかい!!すごっ!
とにやけること間違いなしです☆彡
てなわけで、両シリーズのファンの方には特におすゝめします!!
おすゝめ No.02
魅力的すぎる悪役!はまりすぎる天本!
主人公でも悪役でも、魅力的な人物がいるとストーリーがグッと面白くなりますよね!
映画やドラマにおいてキャラクターを魅力的にするのは、その人物の描かれ方、
演出、俳優の演技力かなと思います。
この作品で3拍子揃っている魅力的なキャラ。
それは他でもない「溝呂木省吾」でしょう!
個人的にはあの「羊たちの沈黙」の「ハンニバル・レクター」と同レベの魅力を
溝呂木に感じます…!
では彼のどこがそんなに魅力的なのか?
彼の魅力は
①容姿
②手ごわいこと
③彼なりの哲学
この3つに集約されていると思います。
①容姿
うん、頑張りました。頑張って書きました(笑)
いまいち不気味さが伝わらないのが無念ですが、まあ外見的特徴はこんな感じ。
これで目を見開いて嬉しそーうに殺人を語るのです…ギョエっ(;゚Д゚)!!
お歳を召されてからはとっても柔和なお顔立ちになった天本さんですが、この作品では
柔和の真反対。凄い存在感。物凄い気迫。陰気で胡散臭い。
この作品を観るときは、彼に注目してみてください!
②手ごわいこと
やっぱり、敵はそれなりに強くなくちゃあいけねえ。そう思います。
主人公に敵があっけなくやられ過ぎて、
「嘘やん!こいつラスボスじゃなかったんかいっ!」
そう叫びたくなったこと、ありませんか?
安心してください、溝呂木強いですよ。
詳しく書くとネタバレになってしまうので書きませんが、主人公・桔梗と一騎打ち
がありますっ!お楽しみにっ!
③彼なりの哲学
こういうワケがあってこういうことをするのか!と納得できる理由を持っていること。
これは善悪は抜きにして、キャラクターを魅力的に見せるうえでかなり重要なポイント
だと思います。
私たちはキャラクター独自の特徴が見えるところに魅かれるからです。
まったく、何又かけてるんでしょうか…
しかもそのために女性を生霊にするわ、死なせるわ、出家させるわ、父を裏切るわ、
もう極悪非道と言われても致し方ないことをやっちゃってますよね、あいつ💢
それでも光源氏はキャラクターとして魅力的。
イケメンで何でも良くできる天才君であることも魅力ですが、これだけだと女たらしの
理由が弱いと思います。
世の女性はイケメンってだけでメロメロかもしれませんけど、
世の男性は全員敵に回すことになるでしょうっ( `ー´)ノ
そこで!紫式部ちゃんが彼に与えた設定・絶対に叶わない藤壺への、そして母への
憧れが活きてくるわけです!(藤壺とはなんだかんだで一夜を共にしちゃいますけど)
両想いなのに、成就しない恋なんて……ひどいっ!ひどすぎるよう!くーっ!!
読者はこのように源氏の生い立ちに同情しながら読むので、
たとえ節操という概念がまるでないかのような振る舞いでも、まったく源氏ったら
どんだけ女たらしてんだよ~と言いつつ読み進めちゃうのです!
そしてその納得できる理由というのは大抵、①生い立ちか、
もしくは②その人物が持つ筋の通った哲学に由来すると思います。
まあ、厳密にいえば生い立ちや今までの人生がその人物にその哲学を抱かせたことに
なりますが、単発の映画の場合は登場人物のバックグラウンドよりも話の展開に
時間を割かないと尺がヤバいことになっちゃうので、哲学が生まれる経緯については
明らかにされない場合が多いのです。
たまに大作とかシリーズものになると、しっかり生い立ちまで説明しているものも
あります。
いろいろ書いてしまって前置きがすっかり長くなってしまいましたが、
今回取り上げている溝呂木は②筋の通った哲学を持っています。
筋の通ったふーき!は持ってません。はい、すみません。
彼の哲学は殺人を推奨するものなので絶対に容認されてはいけませんが、論理的に
積み上げられてはいるんですね。
じゃあ、彼の哲学というのはどんな内容なのか。
「生きていても無駄な奴はどんどん殺そう!」というのがスローガンです*1
それ以上は、ネタバレになるので書けません…
見てのお・た・の・し・み♡ってことです!はい、すみませんでした。
おすゝめ No.03
エンターテイメント性、楽しい演出、テンポのよいカットと編集、
そして「反戦」というテーマ。
この「殺人狂時代」という作品には「岡本喜八」という監督の特徴がギュッ!と
詰まっているように思います。
なので、他の作品を観て既に「わ!この監督の作品好きかも!」
となっている方にはもちろんのこと、「岡本喜八って誰じゃい!」という方に監督
を知って頂くためにもゴリ押ししたい作品なんであります!
喜八監督作品の特徴について述べるとそれだけでかなり長ーくなってしまいますので
ここではこの作品においての「反戦」の描かれ方に絞って書きますね!
冒頭でチラッと言いましたが、この作品は「戦争」そのものを描いているのでは
ありません!
結論から言うと、この作品は殺人を肯定する、つまり戦争を肯定する組織を
登場させて、主人公と対立させることで「反戦」を訴えているのだと思います。
悪役・溝呂木の「無駄なやつはどんどん殺そう!」という考えは傍から見ると
非常に邪悪で自己中心的に見えます。
しかし戦争も、自分の国にとって「都合が悪い」国を攻める行為なわけですから、
あまり本質は変わらないんじゃないかと思うのです。
溝呂木は「殺人狂」たちを駒のように使い、相手を殺し損ねたら「無駄なやつ」として
そいつを殺します。なんだか、国家によってなんの恨みもない相手を殺さなければ
ならない兵士たちと境遇が似ていますよね。
ここに出てくる殺人狂と兵士が大きく違うのは、人を殺すことに抵抗があるか否か
だけです。
このようにして溝呂木を中心とした小国家を悪として描くことで、戦争を強く批判する
監督のメッセージが浮き彫りになるのであります。
結局何が言いたいの?
ここまで読んでくださった方、本当に本当に長く拙い文章にお付き合い頂いて
ありがとうございましたm(__)mm(__)m
気付いたら3000字超えてました(;´・ω・)
読み飛ばした方、つまんねーよおいコラと思われた方、もっと面白い文章が
書けるように頑張りますのでどうかご勘弁を……
さて、お待たせしました。結局何が言いたいの?
殺人狂時代という作品は
なんじゃらほい!という方は是非、中身を読んでみてくださいm(__)m
*1:+_+